個人事業主やフリーランスとして確定申告をしていると、夏頃に税務署から「予定納税額の通知書」が届くことがあります。前年と同じ感覚で資金を使っていると、急な出費のように感じるかもしれません。この記事では、予定納税の対象となる目安、仕組み、納付時期、支払い方法、減額申請について紹介します。
予定納税とは?
予定納税は、前年の所得税額をもとに、その年に納める所得税などの一部を前払いする制度です。確定申告でまとめて納める負担を軽くし、国にとっても税収を安定させる役割があります。
所得税を前払いする制度
予定納税では、前年の所得などをもとに計算した税額を、年の途中で前払いします。対象となるのは、所得税と復興特別所得税です。
前払いした分は、翌年の確定申告で計算した所得税額から差し引かれます。実際の税額より多く納めていた場合は還付され、不足していた場合は確定申告の期限までに追加で納付します。
予定納税がある目的は?
予定納税の目的は、確定申告時に大きな税額を一度に納める負担を分散することです。事業所得などは月ごとの収入に差が出る場合もあり、翌年3月にまとまった金額を用意するのが難しい人もいます。
国側にとっては、税収を年の途中から確保できる仕組みでもあります。納税者にとっても、税金を計画的に納める意識を持ちやすくなる制度といえるでしょう。
予定納税の仕組みは?
予定納税は、前年の所得税額をもとに計算され、年2回に分けて納付します。その年の収入が前年より少なくなった場合でも、何もしなければ前年を基準とした金額が通知されるため注意が必要です。
前年の所得や税額をもとに計算
予定納税基準額は、前年の確定申告で確定した所得税額をもとに計算されます。ただし、給与所得や退職所得にかかる税額、源泉徴収された税額などは、計算に含まれない場合があります。
そのため、前年に一時的な収入があった人や、副業・事業で利益が大きく出た人は、翌年に予定納税の対象になることがあります。通知書に記載された予定納税基準額と各期の納付額を確認しましょう。
年2回に分けて納付する
予定納税は、第1期分と第2期分の年2回に分けて納付します。原則として、各期に納める金額は予定納税基準額の3分の1です。
たとえば、予定納税基準額が30万円の場合、第1期に10万円、第2期に10万円を納めます。残りの10万円分については、翌年の確定申告でその年の実際の所得税額を計算し、予定納税額を差し引いたうえで精算します。
確定申告で精算される
予定納税は、税金を余分に取られる制度ではありません。前払いした金額は、翌年の確定申告で計算した所得税額から差し引かれます。
たとえば、その年の所得税額が35万円で、予定納税で20万円を納めていた場合、確定申告時に納める金額は15万円です。反対に、実際の所得税額が15万円で予定納税として20万円を納めていた場合は、差額の5万円が還付されます。
予定納税は年収いくらから?
予定納税は、年収がいくら以上なら必要という単純な制度ではありません。収入から経費や所得控除を差し引いた後の所得、前年の所得税額などをもとに対象かどうかが決まります。
年収だけでは決まらない
予定納税の対象は、年収ではなく「予定納税基準額」によって判断されます。たとえば、売上や給与収入が同じでも、必要経費、医療費控除、扶養控除、社会保険料控除などが異なれば、所得税額も変わります。
個人事業主の場合は、売上から仕入れや経費を差し引いた事業所得が基準になります。会社員でも、副業や不動産所得などで確定申告をしており、前年の税額が大きくなった場合は対象になる可能性があります。
予定納税基準額15万円以上が対象
前年分の所得金額や所得税額などをもとに計算された予定納税基準額が15万円以上の場合、原則として予定納税が必要です。対象になる人には、通常6月頃に税務署から予定納税額の通知書が届きます。
予定納税額は、原則として予定納税基準額の3分の1を第1期分と第2期分で納めます。つまり、1年間に納める予定納税額は、基準額のおよそ3分の2です。残りの税額は、翌年の確定申告で精算します。
会社員でも対象になる?
会社員は通常、勤務先が給与から所得税を源泉徴収して年末調整を行うため、予定納税の対象になることは多くありません。ただし、給与以外の所得が大きい場合は、会社員でも予定納税が必要になる可能性があります。
たとえば、副業の事業所得、不動産所得、株式の配当や譲渡による所得などがあり、確定申告で納める税額が大きくなった場合です。前年に副業で大きく利益が出た人は、翌年に通知が届くことがあります。
予定納税はいつ払う?
予定納税の納付期間は、毎年7月と11月です。期限を過ぎると延滞税がかかる場合があるため、通知書が届いたら納付日を確認しておきましょう。
第1期は7月
第1期分の納付期間は、原則として7月1日から7月31日までです。対象者には6月頃に税務署から通知書と納付書が送られます。
口座振替を利用する振替納税を設定している場合は、実際の振替日が納付期限と異なることがあります。残高不足にならないよう、通知書や国税庁の案内で日付を確認しましょう。
第2期は11月
第2期分の納付期間は、原則として11月1日から11月30日までです。土日祝日などにより期限が翌営業日になる場合もありますが、基本的には11月中の納付を意識しておくとよいでしょう。
第1期分を納めた後も、第2期分の納付が必要です。年末に向けて事業の支出や生活費が増える時期でもあるため、7月の時点から第2期分も含めて資金を確保しておくと安心です。
支払いが遅れるとどうなる?
納付期限までに予定納税を納めなかった場合、延滞税がかかることがあります。期限を過ぎてからでも納付はできますが、遅れた日数に応じて負担が増える可能性があります。
納付が難しい事情がある場合は、そのまま放置せず、所轄の税務署へ相談しましょう。所得が前年より大きく減っている場合は、期限内に減額申請を行うことで納付額を見直せる可能性があります。
予定納税を減らすことはできる?
前年より収入や所得が減る見込みの場合、予定納税額をそのまま納めると、資金繰りの負担が大きくなることがあります。そのような場合は、予定納税額の減額申請を検討できます。
所得が減った場合は減額申請できる
廃業、休業、業況不振、災害、医療費の増加などにより、その年の申告納税見積額が通知された予定納税基準額より少なくなる見込みの場合、減額申請ができます。
第1期分から減額したい場合は、その年の6月30日時点の状況をもとに見積もり、原則として7月15日までに申請書を提出します。第2期分だけを減額したい場合は、10月31日時点の状況をもとに、原則として11月15日までに申請します。
減額申請ができるケース
減額申請を検討しやすいのは、売上が大幅に下がった場合、事業を休業・廃業した場合、病気やけがで働けなくなった場合、災害による損失があった場合などです。
扶養家族が増えた、医療費が多くかかった、所得控除が増える見込みといった事情も、申告納税見積額に影響することがあります。申請書は書面またはe-Taxで所轄税務署へ提出できます。税務署が内容を確認し、承認、一部承認、却下のいずれかを決定します。
まとめ
予定納税は、前年の所得税額などをもとに計算された予定納税基準額が15万円以上の場合に、所得税と復興特別所得税の一部を前払いする制度です。年収だけで決まるものではなく、経費や控除を反映した所得や前年の税額が関係します。
納付は原則として7月と11月の年2回で、各期に予定納税基準額の3分の1を納めます。翌年の確定申告で実際の税額と精算されるため、納めすぎた場合は還付を受けられます。前年より所得が減る見込みがある場合は、減額申請も検討してみてください。

